拠点形成実施計画

当COEプログラムでは、地球物質科学研究センターに既設の研究部門を横断するかたちで専門性の高い研究グループを新たに5つ編成します。これらの研究グループが協力して分析実験技術の開発をさらに進め、国際研究拠点にふさわしい最先端の研究環境を整備します。こうしたリソースを活用して、各研究グループがコアとなる共同研究を世界中から公募し、地球・惑星の形成や進化のダイナミクスの解明に取り組んでいきます。このプログラムを国際的な基準で推進するために、プログラム国際評価・勧告委員会を設置し、個々の共同研究の採択や評価をおこないます。

当COEプログラムの母体である地球物質科学研究センターは全国共同利用施設として多くの共同研究者を受け入れてきましたが、全国共同利用施設としての枠組みでは海外の研究者との共同研究の支援に限界がありました。当COEプログラムでは、研究経費支援、言語生活環境支援を充実させることでそのような問題を改善し、円滑な国際共同研究を展開していきます。



超高圧基礎実験科学グループ
伊藤 英司(グループリーダー)

前世紀の超高圧実験科学は、660km不連続面直下(〜26GPa)までのマントルの物質構造を決定するとともに、地球のダイナミクスを特徴づけるプレートやマントルプリュームなどの駆動力が下部マントルに起因することを明らかにした。そこで、更に深い下部マントル物質の相平衡、物性測定、元素分配の決定と地球始原物質の溶融関係を明らかにするため、1)50GPa以上での定量的超高圧・高温実験を可能にする六方押しプレスに焼結ダイヤモンドアンビルを組み込んだ川井式超高圧発生装置の開発を行い、2)本装置による〜100GPaまでの定量的実験、ダイヤモンドアンビルセルによる100GPa以上の領域での半定量的実験と、地球惑星分析化学グループの微小領域化学分析を組み合わせ、下部マントルでの沈み込んだ海洋地殻の鉱物相・化学組成変化、D"相の成因、初期地球における地球中心核形成プロセスの理解と、その結果生じる初期マントルの物理化学的性質を明らかにする。



固体地球物性学グループ
桂 智男(グループリーダー)、米田 明

地球内部物質の物質構成と、温度分布を明らかにすることは地球科学の重要な課題である。地球内部の物理的・化学的状態の定量的理解を進めるには、地球内部構成鉱物の諸物性を実験的に決定することが必須である。そこで、1)マントル主要構成鉱物の熱膨張率を温度・圧力の関数として決定することと、それによるマントルの断熱温度勾配の評価、2)高圧鉱物の単結晶の合成と、共振法による弾性定数とその温度微分の精密な決定、更に地震波トモグラフィーの結果との対比によりマントル内部の水平方向の温度分布の評価、3)下部マントル深部条件でのperovskiteの電気伝導度測定による下部マントルの温度に関する情報の抽出、4)NMR・FT-IR・ Raman分光法によるマントル鉱物の局所構造解析・物性測定と予測、熱力学的手法の適用によるその安定関係の評価、によって地球内部物性の理解を目指す。



マグマ物性学グループ
神崎 正美(グループリーダー)、薛 献宇、福井 宏之、山下 茂

マグマは地球・惑星深部の物理化学的情報を物質として地表にもたらし、冷却・固結によってその情報を岩石として固定する。したがってその研究は地球や惑星の起源と進化の解明に向けて重要な手がかりを与える。そこで、マグマの構造・物性・化学的性質を表層から地球深部までの温度圧力領域において実験的に決定するため、1)外熱式ダイヤモンドアンビルセルを使ったRaman・FT-IR・ XAFS・ XRF高温高圧その場測定法の開発、2)物性測定に用いる放射光を利用した高圧X線ラジオグラフィ法の改良と、高圧下での粘性係数・相互拡散係数・熱伝導率測定法の開発、3)特に水等の揮発性成分のマグマへの溶解機構とそれらの物性に及ぼす効果についてのNMR・Raman・FT-IR・XAFSによる多角的評価、4)地球惑星分析化学グループの微小領域化学分析と連携したマグマ中の遷移金属や希土類元素の局所構造解析による結晶とマグマ間の元素分配の基礎理論の確立と、その場観察高温実験による実効分配係数の決定、5)第一原理分子動力学法等の手法を用いた実験の補完、によってマグマ物性研究を推進する。



地球惑星分析化学グループ
牧嶋 昭夫(グループリーダー)、千葉 仁、森口 拓弥

岩石や鉱物の起源と形成プロセスを理解するためには、地球物質進化にともなって再分配された元素及び同位体の分布を、なるべく小さな構成単位で総合的に解析する必要がある。そこで、1)既に分析可能な55元素に関して、更新をはかるICP-MSとTIMSによる同位体希釈法を用いて、定量精度の向上、必要試料量のさらなる微小化、2)従来困難であった約10の元素(例:Be・Ga・Se)に関する分析手法の開発、を実施する。また沈み込み帯を介した地殻・マントル物質循環において地球表層物質のマーカーとなる、Li・B・O・S同位体に関して、3)HR-SIMSによる高精度同位体分析を可能にするための技術開発・標準試料作成、4)その手法を海洋島玄武岩のカンラン石中に含まれるガラス包有物に適用し、物質循環によるマントル進化の実証を目指す。以上の元素・安定同位体分析に加え、5)放射壊変同位体であるSr・Ce・Nd・Os・Hf・Pb同位体分析を目的に応じ適用し、沈み込み帯での物質移動、大陸地殻とマントルの進化プロセスについての応用研究を進める。6)以上の全ての分析技術を集約し、小惑星サンプルリターン計画(MUSES-C)で得られる極微量試料の初期分析を実施、惑星・隕石の起源に関する基礎研究を行う。



地球惑星年代学グループ
中村 栄三(グループリーダー、プログラムリーダー兼任)、小林 桂、栗谷 豪

不可逆過程である固体地球物質進化を研究する上で、その温度・圧力・化学組成変化を時間の関数として理解することは必要不可欠であり、時間情報を岩石から抽出する放射壊変元素を用いた絶対年代測定はその根幹をなす手法である。そこで、既に実用化された希ガス用質量分析計によるK-Ar、TIMSによるRb-Sr・La-Ce・Sm-Nd・Re-Os・U-Th-Pb放射年代測定法及びHR-SIMSを用いた極微小領域ジルコンのU-Pb年代測定に加えて、1)30万年から数年までのマグマプロセスに対応できるU-Th系列短寿命放射非平衡を用いた年代測定法の開発によって太陽系初期から現在までをカバーできる総合年代測定システムを確立し、2)超高圧基礎実験科学グループ、マグマ物性学グループ、地球惑星分析化学グループと連携、地球の起源、物質進化、ダイナミクスの実証研究を行う。