珪酸塩高圧相の合成とその熱力学的性質

Synthesis and thermodynamic properties of high-pressure silicate phases

赤荻 正樹

Masaki Akaogi

学習院大学・理学部

受け入れ教官:伊藤 英司


 下部マントルで安定な珪酸塩鉱物の高圧相を超高圧高温下で合成し,その熱力学的性質,特にエンタルピーを測定し,それによって高温高圧相関係を熱力学的に調べることを目的として研究を進めている.平成8年8月に1週間固体地球研究センターに滞在し,MgSiO3−Mg3Al2Si3O12系ペロブスカイト固溶体を合成した.5000トン分割球アンビル型超高圧発生装置を使用し,27−28GPa,約1600℃でxMg4Si4O12・ (1-x)Mg3A12Si3O12ペロブスカイト(x=0.8,0.6)を合成した.この実験は昨年度に引き続いて行った.合成試料は微小領域X線回折装置で詳細に調べ,未転移相を除去して精製した.それを学習院大学理学部化学科の筆者の研究室で,Calvet型高温熱量計を用いて示差落下熱量測定法によりエンタルピーを測定した.60%Mg4Si4O12・ 40%Mg3A12Si3O12ペロブスカイトではエンタルピーは125.0±1.7kJ/molであった.80%Mg4Si4O12・20%Mg3A12Si3O12ペロブスカイトについては測定準備中である.

 すでに測定されたMgSiO3ペロブスカイト,ガーネットの転移エンタルピーと今回の測定値を使用して予備的に計算された,Mg4Si4O12−Mg3A12Si3O12系のガーネット-ペロブスカイト転移の1800℃での相境界線を下図に示す.この図の点線部分はMg3A12Si3O12ガーネットの高圧分解反応の実験データから引いたものである.ガーネット,ペロブスカイトそれぞれの一相領域とガーネット+ペロブスカイトの二相領域は,高圧相平衡実験の結果と調和的である.今後80%Mg4Si4O12・20%Mg3A12Si3O12ペロブスカイトをさらに合成し,そのエンタルピー測定を行って,この系の23−30GPaでの相関係を熱力学計算により精密化する予定である.

 共同利用期間を通じて,伊藤英司教授と桂智男氏には大変お世話になった.厚くお礼申し上げる.

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Institute for Study of the Earth's Interior