近畿地方領家帯塩基性岩類の年代測定

Age determination of basic rocks in the Ryoke Belt, Kinki district

藤井 宏明

Hiroaki Fujii

神戸大学大学院教育学研究科修士2年

受け入れ教官:加々美 寛雄


調査地域
 本研究における調査地域は大阪府と奈良県との県境に位置する生駒山地南部の信貴山周辺部である.この地域は領家帯に属し,生駒山を中心に分布する領家帯塩基性岩類とその周辺に広く分布する花崗岩類がみられる.

研究目的

 本研究の対象である中性深成岩は生駒山周辺部ではこの地域にしかまとまった岩体は見られない.前回の共同利用により,トーナル岩とそれに含まれる石英閃緑岩の同位体の分析及びRb,Srの同位体希釈法による定量分析により,石英閃緑岩の大まかな年代が得られた.しかし,前回の分析ではデータの量的に不十分であり,大部分を占めているトーナル岩の年代は依然不明である.このため今回の目的は石英閃緑岩の年代を確定するとともにトーナル岩の年代を明らかにすることが目的である.結果は以下のとおりである.

 石英閃緑岩:155.0±15.0Ma, Initial Sr isotopic ratio(SrI)0.70728±0.000061	(MSWD=0.37)
 トーナル岩:125.7±31.4Ma, SrI 0.707510±0.000256(MSWD=0.46)
石英閃緑岩のアイソクロン中でややはずれた1サンプルをのぞいてアイソクロンを算出すると159.7±7.4Ma, SrI 0.707256±0.000033(MSWD=0.09),トーナル岩のアイソクロン中でややはずれた3サンプルをのぞいてアイソクロンを算出すると119.1±2.8Ma, SrI 0.707551±0.000022(MSWD=0.01)という正確度の高い年代が得られる.

 領家帯の塩基性岩類の火成活動においてはKagami et al.(1995)のなかで,anorthositic gabbroの年代がNd-Sm法により169±29Maという年代が示されており, この時期に領家帯において火成活動が存在しうると考えられる.ただし, これらのSr,Nd同位体比初生値は異なっている.また,トーナル岩に関しては加々美他(1995)による地質学論集の中で述べられている安山岩質岩脈のうちの111±7Maとはかなり調和的な年代をとっており,初生値も比較的近い値である.

 以上の結果より,生駒山南部に見られるトーナル岩質岩脈の年代は119Ma前後と推測され,これは後の後期白亜紀の花崗岩類の活動の先駆的な物であると考えられる.またこの岩体に含まれている石英閃緑岩の小岩体はこれよりもさらに先立つ角閃石はんれい岩類の活動と花崗岩類の活動の間に位置する火成活動であったと考えられる.


[目次へ戻る]
Institute for Study of the Earth's Interior