ベトナム第四紀火山岩の成因

Petrogeneiis of Cenozoic baslts from Vietnam

ホアン・ヌエン

Nguen Hoang

東京大学海洋研究所, 東京都中野区南台l-15-1

受け入れ教官:久城 育夫


 ホアン・ヌエン博士は,1996年10月2日から10月6日まで,岡山大学固体地球研究センターに滞在し,講演,研究施設の見学,当センターの研究者との活発な議論,共同研究の打ち合わせおよび大山火山の視察を行った.ホアン博士は,モスクワ市立大学で学士(1981,地質)および修士(1983,地質および地球化学)を取得し,1996年の3月にアメリカ合衆国シカゴのイリノイ州立大学でMartin F.J.Flower教授のもとで,学位(地球科学)を取得した.現在,日本学術振興会の博士研究員として東大海洋研に在籍している.彼は,1983年から1990年まで,ベトナム科学アカデミーに勤務し,ベトナム高地の地質探査の国内プロジェクトのチームリーダーを勤めた.ロシアの科学者との共同研究で,南シナ海の研究調査船に幾度か乗船した経験もあり,ロシア,アメリカ合衆国およびベトナム周辺の地質に関して,広範な経験および知識を有している.現在は,インドシナ半島特にベトナムに分布する新生代の玄武岩類の研究を行っている.

 当センターにおいては,10月4日に「ベトナムにおける新生代玄武岩類の成因:薄くなったリソスフェアと水に富んだアセノスフェアの相互作用」というタイトルの講演を行った.ベトナムの新生代の火山に関する研究は従来ほとんど知られておらず,ホアン博士の研究は,ベトナムの火山岩類に関する先駆的な研究である.またサンプルの多くは,掘削資料であり,地表における風化変質を免れた貴重なものである.それらを用いて,多くの興味深い事実を明らかにした.まずプレート内の火山にもかかわらず,ハワイなどの,マントル内のプルーム起源の火山とは,マグマの噴出量や噴出率において違いが認められた.また,多くの火山において,初期には珪酸に飽和した玄武岩が噴出し,後期には珪酸に不飽和なアルカリ玄武岩が噴出することを明らかにした.ホアン博士は,それら玄武岩類の,主要元素,徴量元素,Sr,Nd,Pb同位体を用いて,マグマの成因に関して詳細な議論を行った.その結果,マグマの源物質として,より浅いリソスフェアと,深部のアセノスフェアを識別し,それらの相互作用とマグマの生成を結び付けた.その結論は,インドとユーラシア大陸の衝突とマグマの成因を結び付けようとする野心的なものであり,当センターにおいても活発な議論がなされた.

 当センターの超高圧装置や,クリーンルーム,質量分析計などの見学を行い,多方面の研究者と活発な議論がなされた.中村教授とは,今後ベトナムの火山岩について共同研究を行うことが話し合われた.

 大山火山においては,日本のような沈み込み帯に位置する火山とベトナムの火山の違いを視察した.特に,大山の降下火砕物および火砕流に興味をもって担当の研究者と活発な議論を行った.


[目次へ戻る]
Institute for Study of the Earth's Interior