エンダービーランド,リーセルラルセン山に分布する変成岩の同位体平衡の研究

Investigation of the isotopic equilibrium conditions of metamorphic rocks in the Riiser-Larsen Mt., Enderby Land

川野 良信

Yoshinobu Kawano

佐賀大学文化教育学部(旧教育学部)

受け入れ教官:加々美 寛雄


目的
 従来より変成岩のアイソクロン年代を求める事は非常に難しいことである.それは同位体の平衡がいかなる温度・圧力条件と範囲において成り立っているかが明確ではないためである.本研究は露出のよい南極大陸の変成岩を用い,同位体平衡の温度・圧力・範囲を推定することを最終の目的としている.今回研究の対象に選んだのは南極大陸エンダービーランド,リーセルラルセン山である.この地域は地球上最古の岩体のひとつであるナピア岩体に属する.また,非常に高圧かつ無水状態で変成作用が進んだことがオーストラリア・日本の研究者らによって明かにされている.今回はリーセルラルセン山に多数貫人するドレライト岩脈(アムンゼンダイク)の年代を求める事を主たる目的とした.これは無数に貫入する岩脈による変成岩の同位体比の再平衡をあらかじめ見積もっておく必要があるためである.試料は35次及び36次南極観測隊によって採取されたものを利用した.

結果
 リーセルラルセン山から採取されたドレライト11試料について87Sr/86Sr比と143Nd/144Nd比及びSm,Ndの定量測定を行った.測定の結果,11試料中5試料でSm-Nd全岩アイソクロン年代を構成した.年代は1299Ma,初生値は0.510463であった.この5試料のうち4試料を用いたRb-Sr全岩アイソクロン年代はおよそ3200Maを示す(Rb,Srの定量はXRF分析による).しかしながら,Rb-Sr全岩アイソクロンはエラーも大きく,MSWDも2を越える.このことからRb-Sr全岩アイソクロンは偶然形成された可能性が高い.一方,Sm-Nd全岩アイソクロン年代はSheraton&Black(1981)で報告されているエンダービーランド全域に分布するアムンゼンダイクの年代(1190Ma±200Ma)と誤差の範囲で一致している.このことから,リーセルラルセン山地域には少なくとも1300Ma頃に塩基性マグマの活動があったと考えられる.この塩基性マグマの活動が周囲の変成岩の同位体平衡にどのような影響を及ぼしたのかは今後変成岩の同位体測定が行われるにつれ明かとなるであろう.


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Institute for Study of the Earth's Interior