K2Oに乏しい矢筈岳火山岩類の起源に関する研究

Investigation of the origin of K2O-depleted Yahazutake volcanic rocks

菊池 航

Wataru Kikuchi

熊本大学理学部地球科学教室・修士2年

横瀬 久芳

Hisayoshi Yokose

熊本大学理学部地球科学教室・助手

受け入れ教官:加々美 寛雄


【研究目的】
 島弧-海溝系に出現する火山岩類には,以下の特徴がある:(1〉背弧側程不適合元素に富む,(2)背弧側ほど噴出量が指数関数的に減少する.しかしながら,九州南西部の鮮新世から更新世の火山岩類(肥薩火山区)は,この一般的な特徴と明らかに異なる.現在の火山フロントよりも約50km背弧側に位置している矢筈岳の火山岩類は,K2O量が著しく低い(山本,1960).また,その矢筈岳のすぐ東に分布する輝石安山岩類は,短期間に膨大なマグマを噴出したことを特徴とする火成活動であり,洪水安山岩(永尾ほか,1995)と呼ばれている.これらの事実は,鮮新世-更新世当時の火山フロントが現在よりも西に存在していたことを示唆する.本地域の南部にあたる北薩地域において,渡辺他(1992)は火山岩類の年代値の分布に基づいて,火山フロントの東進を提案している.しかしながら,肥薩地域の火山岩類には,火山岩類に認められる年代値の東進や化学組成の水平変化は認められず,フロントの移動説を積極的に支持しない.

 以上のことから,カリウムに乏しい矢筈岳の火山岩類は,島弧-海溝系火山とは別のテクトニクスセッティングモデルを考える必要がある.矢筈岳の火山岩類の形成年代は,沖縄トラフの形成年代に相当し,地理的にも北方延長部と考えられる.そこで,本研究では,九州南西部の火成活動の産物と沖縄トラフを構成する火山岩類との比較を行い,両者の因果関係を考察することを目的としている.

【研究計画】
 矢筈岳周辺に分布する鮮新世-更新世火山岩類について,地質学的・岩石学的・地球化学的検討を行った.その結果,沖縄トラフの分析データ(Ishizuka et al.,1990;Honma et al., 1991)を比較検討したところ,矢筈岳の火山岩類と沖縄トラフの火山岩類との間に成因的因果関係が存在することが明らかとなった.LILEおよびHFSEの存在度や挙動において,矢筈岳の火山岩類と沖縄トラフの安山岩とはほぼ同じ組成のソースに由来したと考えられる.このことは,同位体比組成によっても示されるものと期待される.また,同位体比を用いた解析は,上部地殻物質との混染・同化作用の影響や,マグマ混合の影響の有無などについても多くの情報を与えてくれるものと期待される.

【研究成果の中間報告】
 矢筈岳の火山岩類に関するSrおよびNd同位体比の測定結果から,沖縄トラフの火山岩とのあいだに多くの類似性が見い出された.これにより,矢筈岳の火山岩類と沖縄トラフの火山岩類との間において,起源物質の共通性が認められた.また,より詳しくみてみると矢筈岳の火山岩類は,その同位体比から2つのグループに分けられる.


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Institute for Study of the Earth's Interior