宇宙線起源He,Ne,Ar生成率の測定 II

Determination of the production rate of cosmic-ray originated He, Ne and Ar . II

南谷 麻由子

Mayuko Minamitani

九州大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻修士課程2年

指導教官:高岡 宣雄

受け入れ教官:長尾 敬介


 隕石が宇宙線の照射を受けると,宇宙線と隕石を構成する核種との相互作用により,隕石中に様々な核種が生成される.この宇宙線起源核種からは,隕石の地球落下からさかのぼって,1億年ほどの間についての情報が得られる.

 隕石希ガスの宇宙線起源核種は,特に3He,21Ne,38Arで顕著であり,その同位体比は太陽風や地球大気とは全く異なる組成を持つ.21Neの主なターゲットは,24Mg,27Al,28Si,32Sなど,38Arについては,40Ca,56Fe,59Niなどである.3Heは核反応の蒸発粒子として生成されることが多いので,隕石を構成する全ての元素からほぼ一様に生成されるが,16Oからの生成は比較的多い.

 宇宙線起源核種の生成率は,特に隕石の化学組成やshieldingの深さ,その他多くの要素に依存しており,正確に決定するのは極めて困難である.そこで今回は,隕石サンプルを鉱物分離し,target chemistryの違いによって生成核種の量に差が生じることを利用して,各ターゲット核種からの宇宙線起源希ガス生成率を実験的に決定した.

 実験は,1)Alfianello(L6)コンドライトの構成鉱物(o1ivine,pyroxene,plagioclase,troilite,metal)を分離し,2)各鉱物フラクションについてEPMA化学組成分析,希ガス分析を行い,(希ガス分析は,岡山大学固体地球研究センターにて行った)3)各鉱物フラクションについて得られた元素組成及び宇宙線起源希ガス核種濃度を用いて,各元素からの希ガス生成率を未知数とした連立方程式を作り,これを最小二乗法で解いて希ガス生成率を決定した.希ガス分析により,各鉱物フラクションについて得られた希ガス量と同位体比は次のとおりである.

		4He  3He/4He  22Ne  20Ne/22Ne  21Ne/22Ne  36Ar  38Ar/36Ar  40Ar/36Ar 

Olivine 	258 	0.16 	7.07 	0.93 	0.90 	2.48 	0.31 	261 
Pyroxene 	251 	0.15 	8.79 	0.86 	0.89 	1.54 	0.82 	362 
Plagioclase 	179 	0.16 	5.09 	0.86 	0.87 	1.22 	1.17 	736 
Troilite	173 	0.23 	3.04 	0.85 	0.83 	0.95 	1.47 	26 
Metal		186 	0.19 	0.60 	1.05 	0.92 	1.62 	1.28 	65 
Bulk 		346 	0.14 	10.7 	0.84 	0.90 	1.45 	0.89 	238 
ガス量の単位は,10-8cm3STP/g
 希ガス分析結果より宇宙線起源成分を求め,これと化学組成分析結果より,21Ne,38Arの生成率について以下の結果が得られた.
 P21Ne = k(38.6[Na+Mg]+11.7[Al]+8.69[Si]+6.28[S]+0.51[FeNi])
 P38Ar = k(277[K]+27.7[Ca]+2.02[TiCrMn+FeNi])
	(10-8cm3STP/g Ma)
	[X]:元素Xのweight fraction
	k=1/T(T:Alfianelloの宇宙線照射年代)

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Institute for Study of the Earth's Interior