珪長質マグマの含水量の測定

Determination of water contents in felsic magmas

森泉 美穂子

Mihoko Moriizumi

北海道大学大学院地球惑星物質科学

受け入れ教官:山下 茂


 火砕噴火の噴火様式はプリニー式噴火,火砕流噴火,マグマ水蒸気噴火など多岐に渡り,それぞれの噴出物が運動,堆積機構について全く異なった特徴を示す.これまで,堆積物の地質学的検討などから噴火の様相は明らかになりつつある.しかし,噴火様式の変化の要因についてはまだ充分に検討されていない.プリニー式噴火では,マグマ自身の揮発性成分の量が噴火様式に重要な影響を与えると考えられている.特に,マグマの揮発性成分の大部分を占めるH2O量の測定は噴火様式を決定する重要な要因になっている.今回,クッタラカルデラのカルデラ形成期の降下軽石の石英斑晶中に含まれるガラスインクルージョンの含水量を決定した.

(1)測定方法
 石英中のガラスインクルージョンのH2O量をFTIR法によって測定した.試料は石英斑晶中のインクルージョンを両面研磨し,赤外スペクトルを顕微赤外スペクトロメーターで測定した.含水量は赤外スペクトルから下記の式で求められることが知られている.

 C(wt%)= 0.01802*abs/red

ここでCは含水量,absは吸収,rは密度(g/cm3),eは吸収能,dは厚さ(cm)である.吸収は3500カイザーのスペクトルを用いた.また,r=2400,e= 8.8を用いた.

(2)測定結果
 クッタラカルデラ形成時には2種類の珪長質マグマが活動した.一方は石英,斜長石,角閃石,単斜輝石,不透明鉱物の斑晶組合せを持ち〈phase 1),他方は角閃石斑晶を持たない(phase 2).それぞれのガラスインクルージョンの含水量は下表の通りである.

 以上の測定および斑晶鉱物組み合わせから珪長質マグマは,少なくとも噴火前にマグマ溜り中では不飽和であったと考えられる.この結果は火山噴火が従来考えられてきたように「珪長質マグマは水に過飽和になったために,発泡し噴火する」といった単純な機構では説明できないことを示唆している.プリニー式噴火等のマグマの上昇速度が早い噴火では,マグマの上昇中に火道で水が添加される可能性は低く,マグマ溜まりでの揮発性成分の変化が重要である.この噴火の噴出物にはマグマ混合の証拠(縞状軽石,斑晶鉱物組成がバイモーダルな分布を示すなど)が見られる.そのため,水に不飽和な珪長質マグマが混合した苦鉄質マグマから揮発性成分の添加を受け発泡し,噴火した可能性がある.


	表 ガラスインクルージョンの含水量

	H2O (wt%) 	Phase 1 Phase 2 
	-------------------------------
	Minimum 	1.6 	1.2 
	Maximum 	2.9 	2.7 
	Points 		9 	15 
	Mean 		2.43 	1.77 
	Std Deviation 	0.44 	0.43 
	Variance 	0.20 	0.18 
	Std Error 	0.15 	0.11 

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Institute for Study of the Earth's Interior