パイロープ−グロシュラーガーネット固溶体の合成実験

Synthesis of pyrope-grossular garnet solid solutions

大川 真紀雄

Makio Ohkawa

広島大学理学部地球惑星システム学科

受け入れ教官:桂 智男


はじめに
 パイロープ(Pyrope: Mg3Al2Si3O12)とグロシュラー(Grossular:Ca3Al2Si3O12)を端成分とする固溶体系列ではイオン半径の小さなMgと大きなCaが等価な8配位席を占有している.現在までには,この固溶体系列での8配位席での秩序配列の有無ははっきりとは確認されていない.その理由の一つとしては,これまで行われてきた合成実験ではX線解析に適した大きさの単結晶は得られていないことが挙げられる.本研究はピストンシリンダー型高圧発生装置を用い高圧下でのフラックス法により,パイロープ−グロシュラー系列の固溶体を系統的に合成し,単結晶の育成を試みた.最終的には合成した単結晶を用いてX線回折実験による真の対称性の決定,結晶構造の精密化を行うことが目的である.

実験
 出発物質の組成はPyrope25mol%,50mol%,75mol%,100mol%で,SiO2,Al2O3,MgO,CaO(試薬特級)を目的組成値に秤量し,モル比1:1でPbO(試薬一級)を混合した.それを白金チューブに封入し,それぞれ3GPa,1200〜1300℃で1〜3時間保持したのち急冷した.Py50については温度,保持時間を変えて三回,残りの組成は一回ずつの合成実験を行った.

結果
 Py25,50,75で自形結晶の育成に成功した.色は無色透明〜白濁であった.結晶粒径は大きいものでPy25が100〜150μm,Py50は数10μm,Py75は200〜300μmほどである.3試料とも(211)面からなる四角三八面体をとり,Py75には特に大きな自形単結晶が多く見られるが,白濁し透明度はあまり高くない.対してPy50は小粒ながら透明度が高い.Py100は自形をとらないガラス質の生成物が得られた.偏光顕微鏡観察では結晶はすべて光学的に等方体であった.

評価
 回収した試料の約1/4を用いて粉末X線回折法による同定を行った.さらに育成された自形単結晶は広島大学機器分析センターにおいてEPMAによる化学分析,結晶の研磨断面の反射電子像の撮影を行った.

 粉末X線回折法ではPy25はGarnetとSpinel,Py75はGarnetとMgO,Py100はGarnetとSpinelの回折ピークを確認できた.Py50の他の2試料ではGarnetのピークは確認できなかった.

 Py25,Py75は結晶内部にSpinel(MgAl2O4)と同定が困難な包有物を含み,Py100には加えてForsterite(Mg2SiO4),Enstatite(MgSiO3)と推定されるものを含んでいる.包有物はPy25では結晶の中心部に3〜10μmほどのSpinelなどが密集し,外側は比較的少ない.Py75では結晶全体に非常に細かい包有物(〜1μm)が広がっている.Py100では,包有物はPy25と同じように結晶の中心部に集まっており,外側は比較的均質である.Spinelは他の包有物と接していることが多い.なお,Py50については今回は反射電子像による分析は行っていない.

 結晶を大きく育成する目的で昇温直後の1時間で,10分ごとに100℃の昇降操作をおこなったPy75では比較的大きな自形結晶が成長したが,包有物が結晶内一面に含まれている.包有物の存在は結晶の成長速度や合成圧力に関係しているものと考えられる.今年度の実験では高純度の単結晶を育成するという当初の目的を果たすことができなかった.更なる実験が必要である.


[目次へ戻る]
Institute for Study of the Earth's Interior