加速器質量分析法の確立と隕石の落下年代

Development of accelerator mass spectrometry and the age of meteorite fall

岡崎 隆司

Ryuji Okazaki

九州大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻修士課程2年

指導教官:高岡 宣雄,中村 智樹

受け入れ教官:長尾 敬介


 隕石中には,高エネルギーの宇宙線と隕石物質との相互作用により,様々な核種が生成される.その生成された放射性核種の含有量を測定することで,隕石が地球に落ちてきた年代,すなわち落下年代を求めることができる.しかし,一般に隕石中の長寿命放射性核種の含有量はきわめて微量であるため,超高感度の質量分析法を必要とする.本研究では,放射性核種36Cl(T1/2 = 3.0 × 105 y)の測定を目的に加速器質量分析法(AMS)を確立し,これによって落下年代を求めることを目標とした.また,落下年代のクロスチェックを行うため,超高感度希ガス質量分析計による放射性核種81Kr(T1/2 = 2.1 × 105 y)分析を行った.AMS法は九州大学理学部物理学科所属のタンデム加速器施設を利用し,その開発を行った.また,希ガス分析は岡山大学固体地球研究センターにて行った.

 AMS法については,加速器施設の持つ問題点とその解決策を明らかにするにとどまった.しかし,サンプル中の硫黄のコンタミネーション除去を目的とした処理法を確立し,さらにAMSに用いる新しいサンプル形態の開発により,36Clのカウントレートを従来30倍以上引き上げることが可能となった.

 また,希ガス分析によっては,以下の隕石の照射年代(Te)と落下年代(Tt)を求めることができた.下の表のTe38は38Arから求めた照射年代,Taは宇宙線起源Kr同位体組成から求めた見かけの照射年代であり,落下年代はTt=(1/l81)ln(Ta/Te)で求められる.36Cl-Ttは36Clから求めた落下年代である.エイコンドライトであるY−7308以外は隕石中の81Kr含有量が少ないためと多量のKr捕獲成分のため宇宙線起源Krの見積もり誤差が大きくなったため,マイナスの落下年代が得られた.

	Sample 		Te38 [Ma]       Ta [Ma]          Tt [Ma]     36Cl-Tt [Ma] 
	Alfianello(L6) 	28.8 ± 3.1 	27.3 ± 5.7 	-0.02 ± 0.07 	Fall 
	ALH-77004(H4) 	7.9 ± 0.8 	5.2 ± 0.8 	-0.13 ± 0.06 	0.21 
	Y-74442(LL4) 	13.1 ± 1.4 	9.3 ±1.8 	-0.11 ± 0.07 	0.11 
	Y-7308(How) 	13.4 ± 1.4 	26.5 ± 5.3 	0.21 ± 0.07 	-
 ALH−77004とY−74442については,21Neから求めた照射年代を用いて,再度落下年代を求めると,それぞれ0.004±0.06,0.05±0.07〔Ma]という年代が得られた.このように,少なくともコンドライトについては,落下年代が真の照射年代によってかなり左右されることがわかった.今後,様々な核種についての分析は,落下年代や照射年代などの隕石の研究にとって重要であり,早急なAMS法の確立が望まれる.


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Institute for Study of the Earth's Interior