海水中溶存炭酸の安定炭素同位体比による人為起源炭素の追跡

Tracing carbons of human origin from stable carbon isotopic ratios of carbonic acids dissolved in sea water

奥田 耕三

Kozo Okuda

北大・大学院地球環境科学研究科

受け入れ教官:日下部 実


 本研究は産業革命以後,化石燃料の消費等で放出される二酸化炭素の安定炭素同位体比が大気中および海水中の二酸化炭素の値より約-20‰も小さい点を利用し,西部北太平洋域における人為起源炭素の取り込みの状況の把握とその定量化を目的としている.

 上記の目的達成のため,国際的にも多くの研究者が取り組んでいるが,データの確からしさ,研究者間でのデータのばらつき(正確さ)がどの程度あるか不確かなのが現状である.

 今回の共同利用では2つの検討をさせていただいた.l)海水からの二酸化炭素の抽出法(精度)に本当に問題が無いか.2)同位体測定の物差しとして使用する準標準物質の値は均一か?2)は異なる研究者間で値を比較する場合はもちろん,長期的に考えたとき自分自身が出したデータの(年ごとの)相互検定を行うためである.なお,試料容器の保存性の検討は先送りとした.

l)二酸化炭素の抽出法(精度)に問題が無いかについて
 試料は1996年4月,北海道噴火湾において10リットルの容器に採水した表面水を100 mlのバイアル瓶約30本に分取したものを用いた.d13C=1.649±0.025‰(n=9)となり分析法に問題無いことが確認された.

2)準標準物質の値の均一性
 本研究では準標準物質として北海道噴火湾の帆立貝(CH-13),函館の上磯のガロウ鉱山の石灰岩(CG-13)を候補としていた.試料はガラス管中に真空保存し,一部近々使用するものについては五酸化二燐を入れたデシケーター中に保存している.準標準物質の絶対値のばらつきについての結果は,CH-13はd13C=0.955±0.007‰, d18O=31.403±0.023‰(n=11)という好結果が得られ,CG-13についてはd13C=-1.639±0.061‰, d18O=20.450±0.092‰(n=14)という結果だった.以上からCH-13は準標準物質として使用可能だが,CG-13については値のばらつきが大きく,スタンダードとしての使用は困難と判断した.


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Institute for Study of the Earth's Interior