東南極大陸形成史の研究

Studies of the formation history of the eastern Antarctic Continent

白石 和行

Kazuyuki Shiraishi

国立極地研究所地学研究部門

受け入れ教官:加々美 寛雄


 東南極には39億年‾5億年間に形成された様々な岩石が分布しており,大陸形成史を明らかにするために大変重要なフィールドである.この地域は日本の南極観測隊による地質学的,岩石学的研究の長年の蓄積のある場所でもある.白石は東南極のセルロンダーネ山地,リュツォ・ホルム湾(昭和基地周辺),エンダービーランドに分布する岩石中,特に変成岩類を中心にその岩石学研究とともにRb-Sr,Sm-Nd,U-Pb系を使い年代測定を行ってきた.U-Pbジルコン年代測定はANUのSHRIMPを使い行ってきている.これらの幾つかの研究の中で特に詳しく年代測定を行ってきたセルロンダーネ山地の研究を1996年10月極地研究所で行われた第16回南極地学シンポジウム講演要旨を引用する.なお,このシンポジウムでは白石は,日の出岬の変成トロニエム岩の成因,エンダービーランドのSandercock NunataksのSm-Nd,Rb-Sr年代についても共同研究者とともに講演を行っている(以上,加々美寛雄記す).

 セルロンダーネ地域の地質構造発達史について,Toyoshima et al.(1995)は山地中央部での詳細な観察から,7つの変形ステージを識別した.これらのステージについて,絶対的な年代目盛は十分ではなかったが,最古の変形作用(D1)と同時期の変成作用ピーク時をSm-Nd全岩年代から,約10億年前とした(Shiraishi and Kagami,1989,1992).また,最後の変形時相(D7)はこの地域に広く分布する非変形の花こう岩類のSm-NdおよびRb-Sr全岩年代である約5億年前の直前であるとした.われわれはさらに年代値の精度をあげるために,これらの方法に加えSHRIMPによるジルコンのU-Pb年代も検討している.現在までに得られた二つの代表的な岩石種の年代値を報告する.

 Metatonalite(85020358B):南西岩体の代表的な岩相である.mylonite化をほとんど受けていない試料.柱状ジルコンの両端部が角張っており,グラニュライト相変成岩に典型的な丸みを帯びた先端部とは明らかに区別できる特徴を持つ.カーソードルミネッセンス(CL)像ではgrowth zoningが見られるが,BEI像でははっきりしない.207Pb/206Pb年代は994±5Maを与え,すでに報告されたRb-Sr全岩アイソクロン年代(956±39Ma,Takahashi et al.,1990)とよく一致している.これはtonaliteの貫入年代と見られる.

 Enderbitic gneiss(85011503D):北東岩体に産するグラニュライト相正片麻岩.柱状ないし球状のジルコンを豊富に含む.柱状ジルコンの先端部は丸みを帯びている.あまり明瞭ではないが,CL像,BEI像ともに,小さなコア部が認められる.コンコーデイア図の上では約960Maと650Maをそれぞれupper,lower interceptとするディスコーデイアを作るがweighted mean ageは計算できなかった.これらの年代はすでに報告したSm-NdおよびRb-Sr全岩アイソクロン(それぞれ,961±101Ma,978±52Ma)やSm-Nd全岩-Hornblende-Biotite-Plagioclaseアイソクロン年代(624±18Ma)と対比できそうである(Shiraishi and Kagami,1989,1992).

 以上のように,いずれもこれまでに報告された年代値と誤差の範囲内で一致するが,MetatonaliteとEnderbitic geissのいずれが古いかはこれだけでは不明である.また,約6‾6.5億年前に熱的事件があった可能性がある.

 Picciott(1969)はセルロンダーネの北東岩体の変成岩のジルコンのPb-Pb年代として約27億年を報告したが,今回のSHRIMPでは10億年より古いジルコンは見つかっていない.これは,対象とした変成岩の原岩である火成岩の貫入した年代がピーク変成作用とほぼ同時であることを示すものであり,約11億年というNdモデル年代もそのことを支持する(Shiraishi and Kagami,1992).


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Institute for Study of the Earth's Interior