ケイ酸塩ペロブスカイト-メルト間の元素分配

Element distribution between silicate perovskite and melt

鈴木 敏弘

Toshihiro Suzuki

学習院大学理学部化学科助手

受け入れ教官:伊藤 英司


 地球の下部マントルの主要構成鉱物であるケイ酸塩ペロブスカイトと,これと共存するケイ酸塩メルト間の元素分配挙動は,地球の形成過程から現在までの進化を考える上での重要な情報となる.これまでにも,ケイ酸塩ペロブスカイト-メルト間の元素分配についてはいくつかの研究報告があるが,本研究ではイオン半径と分配係数との関連を明らかにすることを目的として,研究を行った.

 本研究では,固体地球研究センターの一軸加圧型5000t超高圧発生装置を用いて,マントルのモデル物質であるパイロライトの約23GPaの圧力での融解実験を行なった.回収した試料の化学組成を電子線マイクロアナライザーを用いて分析することにより,ケイ酸塩ペロブスカイト-メルト間の元素分配係数を求めた.二価イオンよりも三価イオンの方がイオン半径の大きさの分布幅が広いため,本研究ではパイロライト組成の出発物質に,Sc,In,Tmなどの三価イオンを1wt%程度加えた物質を超高圧融解実験に用いた.

 実験により得られた各元素の分配係数をイオン半径に対してプロットすると,Mg2+のイオン半径付近に分配係数のピークが現れた.また,三価イオンの分配係数を見るとA13+の分配係数がV3+などよりも明らかに大きいことから,A13+よりもイオン半径が小さい位置にも分配係数のピークがあることが推定された.これらの二つの分配係数のピークは,ケイ酸塩ぺロブスカイトの6配位と8配位の二つの陽イオンのサイトに対応していると考えられる.カンラン石などの鉱物でも,Mg2+のイオン半径付近に分配係数のピークが現れるが,他の鉱物のピークと比較するとケイ酸塩ペロブスカイトの場合は,Tm3+やCa2+などのイオン半径の大きな元素の分配係数がピークに近いMg2+と比べてあまり減少していない.MgSiO3を主成分とするケイ酸塩ペロブスカイトの場合,理想的なペロブスカイト構造の12配位のサイトにはMg2+イオンが小さすぎるため,サイトが歪んで8配位になった構造を持っている.このため,カンラン石などの6配位のサイトに比べると,ケイ酸塩ペロブスカイトの8配位のサイトはCa2+などのイオン半径の大きな元素も入りやすく,分配係数が比較的大きくなっているのではないかと考えられる.


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Institute for Study of the Earth's Interior