メジャーライトガーネットの高温弾性率の研究

Studies of the high-temperature elasticity of majorite garnet

浦川 啓

Satoru Urakawa

岡山大学 理学部 地球科学科

受け入れ教官:桂 智男


 鉱物の高温弾性を研究する上で球共振法は有効な方法である.現在のところ,球共振法では試料球作成上の問題と共振周波数の測定上の制約から1ミリ以上の試料が必要とされる.このため,数ミリサイズの大きな単結晶を得ることが不可能な高圧相鉱物に対しては多結晶焼結体を利用することが考えられる.しかし,この方法には以下のような問題点がある.共振法で多結晶体を利用する場合は弾性的等方体として取り扱うので試料の等方性が重要となる.空隙が存在すると正しく弾性率を評価できないので,空隙のほとんどない試料を準備する必要がある.熱膨張率の異方性のため,高温で焼結体に空隙が生じる.このような制約があるにもかかわらず,異方性の比較的小さい立方晶系の鉱物の場合は焼結体による高温弾性率の研究は有効な方法となると考えられる.

 われわれはマントルを構成する主要鉱物の高温弾性率を明らかにすることを目的に研究を進めている.本研究では上部マントル深部に存在するメジャーライトガーネットの端成分のひとつである立方晶系のパイロープを対象とし,その多結晶焼結体を作成し弾性率測定を行った.

 高圧実験は岡山大学固体地球研究センターの1000トンプレスを用いた6−8式の2段加圧法で行った.出発試料にはパイロープ組成のガラスを用い,それを白金カプセルに封入しNaCl圧力媒体中に置いた.焼結は9GPa,1400℃で60分以上保持することで行った.この条件ではNaClは軟化しており,試料にかかる応力は静水圧に近いと考えられる.準静水圧下で合成することにより,多結晶試料に異方性が生じることを防ぐことができる.また,減圧時の差応力によって焼結体にクラック等が入らないように,600℃の高温のまま減圧した.この方法により球に成形可能な焼結体を得ることができた.

 粉末X線回折法とEPMAによる化学分析から焼結体は,均質なパイロープであることを確認した.焼結体の密度は3.57±0.03g/cm3であり,理論値とほぼ等しい.これから,作成したパイロープの多結晶焼結体にはほとんど空隙がないと考えられる.

 この焼結体の弾性率を球共振法で測定し,体積弾性率と剛性率を決定した.今回測定した球の直径が1.134mmと小さいため共振周波数が高くなり,0T2,0S2と1S1の3モードしか測定できていない.このうち,0T2,0S2の2モードはスプリッティングを起こしている.これは形状の真球からのずれ,もしくは異方性が原因であると考えられる.ここでは,等方体を仮定し弾性率を計算した.その結果,このパイロープ焼結体が弾性的等方体で取り扱えることがわかった.3モードから計算した弾性率は,体積弾性率Kが176.5±1.1GPaであり,剛性率Gが88.8±0.4GPaである.この値はブリリアン散乱法により測定されたパイロープ単結晶の弾性率K=173〜177GPa,G=89〜92GPaと調和的である.

 高温における球共振法は,共振周波数が高くモードが検出しにくいため,バファロッドを用いない直接法で行った.高温では0T2と0S2の2モードのみしか観測できていないため,弾性率を求めるに至っていない.しかしながら,150℃までは観測共振周波数は温度にリニアに変化しており,異常な振る舞いは起こしていない.焼結体を用いた高温球共振法による弾性率測定は可能であると考えられる.現在,もう一回り大きな球形試料を準備しており,再測定する予定である.


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Institute for Study of the Earth's Interior