コーヒスタン島弧下部地殻のグラニュライトの年代測定

Age determination of lower crust granulites under the Kohistan Island Arc

山本 啓司

Keiji Yamamoto

鹿児島大学理学部

受け入れ教官:中村 栄三


 パキスタン北部のコーヒスタン地方の南部にはグラニュライト相の塩基性変成岩類が産出し,それらはかつての島弧(コーヒスタン島弧)の地殻最下部を構成していた岩石の一部とされている.露頭および顕微鏡下での観察に基いて,塩基性変成岩類の主要な構成鉱物は,1)斜方輝石-単斜輝石-斜長石(母岩),2)ザクロ石-単斜輝石-斜長石-石英,3)角閃石-単斜輝石-ザクロ石の順に変化したことがわかっている.

 本研究では固体地球研究センターのクリーンルームと表面電離型質量分析装置を用いて,前述の各岩型についてのSm-Nd法による年代測定を行い,以下の年代値を得た.

		rock type 		    locality	 age
	1)斜方輝石-単斜輝石-斜長石		KU66	118±13 Ma
	2)ザクロ石-単斜輝石-斜長石-石英	KU66	91±6.3 Ma
						PD06	92±31 Ma
	3)角閃石-単斜輝石-ザクロ石		PDl5	83±10 Ma
これらのグラニュライトの年代値は,露頭で確認されたそれぞれの岩体の形成順序と矛盾しない.

 コーヒスタン島弧の背弧が閉じて大陸に衝突付加した時代は,島弧-大陸境界付近に分布する変形した貫入岩体と非変形の岩脈群の年代値に基づいて,102から85Maの間であるとされている.母岩の斜方輝石-単斜輝石-斜長石グラニュライトの年代は,島弧-大陸衝突イベントの推定期間よりも有意に古く,ザクロ石を含むグラニュライトの年代は,推定期間とほぼ一致している.したがって,上述した一連の改変過程は,島弧-大陸間の衝突と同時あるいはその前後の比較的短期間に起こったものと考えられる.


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Institute for Study of the Earth's Interior