地球は太陽系のその他の惑星と異なり、大きな海洋を持ち、多種多様な生命を育んできた唯一の惑星です。水は生命の誕生と深く関わっており、その循環機構と分布は地球の進化を知る上でも非常に重要です。しかしながら、地球の始原物質である始原的な隕石に比べて地表で観察される水の量は圧倒的に少なく、残りの水が地球内部のどこかに存在するのか、それとも宇宙空間に散逸してしまったのかよく分かっていません。マントル遷移帯は、地球の上部マントル中に観察される410kmと660kmの2つの地震波速度不連続面に挟まれた領域で、その主要構成鉱物はオリビンの高圧相であるワズレアイトとリングウッダイトです。この二つの鉱物は、その結晶構造中に多量の水を貯えることが出来ることが知られているので、マントル遷移帯は地球の水の貯蔵庫であると指摘されてきました。
本論文では、ワズレアイトとリングウッダイトの電気伝導度を高温高圧下で結晶中の水の量の関数として測定し、それを観測と比較することにより、マントル遷移帯の水の量を見積もりました。この二つの鉱物の電気伝導度は、結晶中の水が増加すると大きく増加します。水を含むワズレアイトとリングウッダイトの電気伝導度は、今まで報告されたマンルで地球物理学的に観測された電気伝導度の値より高いことが分かりました。一方、無水のワズレアイトとリングウッダイトの電気伝導度は、観測の結果と非常に良く一致しました。その結果、マントル遷移帯には多量の水は存在しないことが分かりました。(17 Jan. 2008)
Yoshino, T., Manthilake, G., Matsuzaki, T, Katsura, T., Dry mantle transition zone inferred from the conductivity of wadsleyite and ringwoodite, Nature, 451, 326-329, 2008.
