ペンタダイヤモンド (20200720)

  • ネットニュースなどでダイヤモンドより硬い物質として話題です。これは計算で予想されたもので、実際に合成された訳ではありません。しかし、既にこの論文に対する反論(Comment)がarXivに出ていて、ダイヤより硬いということはないと否定されてます。元の論文arXivのコメント。この反論は実際には雑誌に投稿中だと思われますが、preprintとしてarXivに出されています。私も興味あるので、計算でちょっとチェックしてみました。
  • 結晶構造のVestaファイルを置いておきます。面白い構造ではありますが、密度はダイヤよりはグラファイトに近くなります。ダイヤより硬くなるようには思えません。
  • 体積弾性率(bulk modulus)をQuantum Espressoでささっと計算してみました。Birch-Murnaghanの3次式にフィットして、261 GPaが得られました (K' = 3.7)。Commentを書いてる方の結果(250 GPa)とほぼ一致しましたが、オリジナルの論文(381 GPa)とはかなり異なります。ダイヤは450 GPa程度です。
  • オリジナルの論文では弾性定数のC12がマイナスになって、ポアソン比がマイナスになるところがこの物質の特徴的な部分となってます。C11, C12をラフに計算してみました。Quantum Espressoで、a軸方向を1%歪ませて、その時の応力を計算します。a軸方向では5.60 GPa, 他の軸(cubicなので)では1.15 GPaとなりました。荒っぽいですが、これらの100倍がそれぞれC11, C12に相当します。なのでC11 = 560 GPa, C12 = 115 GPaとなりました。C11, C12からも体積弾性率は計算できて((C11 + 2C12)/3)、263 GPaとなりました。これは別途計算した上記の値とほぼ一致します。私の計算ではC12はマイナスにはなりませんでした。また、オリジナル論文ではC11は1715.3 GPaとなってますが、これよりもかなり小さい値になりました。Commentの方の計算では、C11 = 539 GPa, C12 = 105 GPa (同じQuantum Espressoの計算)となっていて、私のラフな計算と大体合います。
  • これらの結果を見る限り、Commentを書いている方たちの主張(弾性関係の計算結果がおかしい)が正しいようです。したがって、ペンタダイヤモンドの硬度はダイヤモンドよりも低いと予想されます。もちろんペンタダイヤモンドが他に面白い物性を示す可能性は残っているので、今後も研究が必要と思います。
  • CODへcifファイル(結晶構造データ)をデポジットしておいたので、CODからも結晶構造を取ってこれます。
  • (20200721)これで終わりと思っていたのですが、もう1つ反論がarXivに出ました。その内容は最初の反論の計算結果とほぼ同じで、私の結果とも似た結果でした。
  • どうでもいい話ですが、最初のCommentのfirst authorのBrazhkin先生とは十数年前SPring-8のBL04B1で彼の課題を数日間徹夜で手伝ったことを思い出しました。
  • 最後に。この構造はsp2, sp3が両方あって、ダイヤモンド構造とも関係ないので、ダイヤモンドを名前に入れるのはよくないと思います。またダイヤモンドはそもそも鉱物名であるので、別の炭素相にダイヤモンドの名前を安易に使うべきではありません。

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Last-modified: 2020-07-21 (火) 08:15:29 (22d)