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解説JMPS2020-1

  • M. Kanzaki, Phase transitions of tridymite MC: A low frequency Raman spectroscopic study, J. Mineral. Petrol. Sci., 115, 296_301, 2020 (https://doi.org/10.2465/jmps.191122b ) の日本語解説

  • トリディマイトは高温で安定なSiO2相の1つであるが、数多くの多形を持つ(多形のほとんどは準安定相)。MC多形は常温で観察される3つの多形のうちの1つであり、高温合成した時に出来やすい多形で、隕石などにも見られる。MCを加熱すると、OP, OS, OCと転移し、最後には本当の高温安定相HPへと転移する。それらの転移については過去に多くの研究があるが、まだ不明なところも多い。例えば、OCとHPの間にLHPという相が主に赤外分光による観察から提案されているが、X線構造解析による研究結果からは支持されていない。OC-HP間の転移ではソフトモードが期待されるが、実際の観察が試みられていない。本研究では、MC相の高温その場ラマン測定を行って、相転移を調べた。以前に高温ラマン測定は1例だけ報告されているが、本研究では低周波数部分を観察しているところが新しいところ。

実験方法

  • 測定に使ったMCは前回の研究(Kanzaki, 2019)で合成したMCである。加熱にはワイヤーヒーターを使い、ラマンスペクトルは自家製の顕微ラマン分光法装置で得た。室温から500 ºCまで加熱し、ラマンスペクトルを得た。また、冷却過程でも測定を行った。

結果と議論

  • 使ったMCにはMX-1も少し含まれていた。MX-1のラマンピークは、70 ºC以上で消えた。この振る舞いは以前のX線回折実験の報告と一致する。ここから高温のラマンスペクトルは、Hiroseら(2005)の高温ラマン測定結果とほぼ一致したので、以下では彼らが測定していない低周波数部分を主に議論する。100と120 ºCの間でラマンスペクトルに大きな変化が生じて、MC/OPの転移が生じた。この温度は以前のX線回折実験の転移温度とほぼ一致する。重要な点は低周波数部分でも大きな変化が観察されたことである。120と200 ºCの間では、高周波数(> 100 cm-1)ではほとんど変化が見られないが、低周波数部分で大きな変化が見られた。これがOP/OS転移と考えられる。なお、Hiroseら(2005)が使ったMC試料は、加熱してもOS相は出ないとされている。200と240 ºCの間でも低周波数部分で変化があり、OS/OC転移と考えられる。これもX線回折実験の転移温度と対応する。240から460 ºC 間では、低周波数部分でも大きな変化は見られなかった。しかし460と480 ºC間で1つの低周波数ピークが消えた。これがOC/HP転移と考えられる。一方、予想されたソフトモードは観察されなかった。この理由はよく分からないが、ソフトモードの強度が弱い、又は非常にブロードだったことが考えられる。
  • 実はOC/HP転移はX線回折実験からは380 ºCくらいと言われており、今回観察された470 ºCとは大きな差がある。一方、提案されているLHP/HP転移温度は473 ºCとされており、今回検出された転移温度とよく合う。しかしながら、もしLHP相が存在するなら、OP/LHP転移が存在しないといけないが、それに対応する変化は今回のラマン測定からは見つからなかった。したがって、今回の結果がLHP相を支持するとは言えない。ラマンの方がX線回折よりも局所的な対称性に敏感であるので、それが転移温度の違いを生じたと解釈した。

謝辞

  • この研究は一部JSPSからの科研費と大学からの運営費交付金を使って行われた。

スペクトルのデータベースへのデポジット

  • 論文に載っているスペクトルはRODへデポジットする予定。

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Last-modified: 2020-06-01 (月) 12:09:10 (72d)