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解説JMPS2019-2

  • M. Kanzaki, Raman spectra of tridymite modifications: MC, MX-1, and PO-10, J. Mineral. Petrol. Sci., 114, adv.publ., 2019 (https://doi.org/10.2465/jmps.190414)の日本語解説

  • トリディマイトは高温で安定なSiO2の安定相の1つであるが、数多くの多形を持つ(多形のほとんどは準安定相)。しかし、それらのラマン分光法による研究はあまり行われていない。また多形の命名については昔から混乱があって、現在でも国際的に使われているNukui & Nakazawaの命名法を使わないで、記載されることがよくあり、特に非専門家には分かりづらい。ラマンスペクトルデータベースでも、正しい命名法が使われていない。そのため、多形を正しく同定することが簡単ではない状態となっている。本研究では、トリディマイトの常温常圧で普通見られる3つの相(MC, MX-1, PO-10)のラマン分光測定を行なって、国際的に使われている命名法を使って整理した。また、これまでほとんど測定されていない低周波数部分も含めて、測定した。

方法

  • MCは合成によるものとSteinbach隕石中のMCを測定した。トリディマイト試料合成にはK2CO3を添加した。ラマン測定ではMCが主で、MX-1, クリストバライトが少量見られた。なお、この試料を粉末X線回折のために粉砕したところ、粉末X線回折パターンでは、ほとんどMX-1が主となっていた。粉砕によってMCがMX-1に転換することは、以前の研究でも知られている。
  • MX-1は合成MCを400 Cで1時間保持し、それを液体窒素中に落とすことで急冷して、で得た。ラマンでは、主にはMX-1であるが、MCも見られた。
  • PO-10については、火山岩起源の天然試料2種を使った。ラマン測定は、このwikiでも紹介している低周波数領域を測れる特殊なノッチフィルター等をつけた自作顕微ラマン分光法装置(488 nm)で行った。多形の同定には粉末X線回折を使った(MCは上記のような問題があるが)。

結果と議論

  • MCのスペクトルについては、Steinbach隕石と合成のMCは一致して、また、過去の報告とも一致した。MX-1については今回が初めての測定結果となる。PO-10については天然2種のスペクトルは一致した。PO-10としてはスペクトルは報告されていないが、以前alpha相として報告されているものと一致した。3つの多形でスペクトルはそれぞれ独特であり、簡単に多形を同定することができる。また、今回初めて低周波数領域が測定されて、それぞれ低周波数領域に特有のピークが観察された。
  • 隕石中からトリディマイトが見つかることがあるが、これまで(多形を詳しく調べた研究では)MCのみが報告されてきた。本研究結果を使って、過去の文献を調べたところ、隕石中のトリディマイトのラマンスペクトルとして報告されているものの中に、PO-10と同じスペクトルがあることが分かった。したがって、隕石中にはMCだけではなく、PO-10も存在することが分かった。隕石中のPO-10の成因について、衝撃圧力による可能性を少し議論した。多形はその岩石の受けた熱的履歴を反映していると考えられるので、正しく多形を同定することは重要であり、本研究によりラマン分光法により同定することが可能となった。

謝辞

  • この研究はJSPSからの科研費と大学からの運営費交付金を使って行われた。

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Last-modified: 2019-09-10 (火) 10:22:18 (6d)