結晶構造内の隙間を可視化する(2016 04/03 作成)

  • 結晶構造の隙間を可視化するプログラム(tunnel.swift)を作ってみた。これは単純な計算で、単位格子内の1点を選んで、予め決めた距離内に原子があるかどうかを調べて、あれば1.0, なければ0.0を返す。単位格子内を細かいメッシュで区切って、その各位置についてこの計算を繰り返すだけ。ついでに隙間率(void volume/unit cell volume)を計算する。データはVestaで読める形式(*.grd)にしてあって、可視化はVestaにお願いする。作成目的は結晶やガラス中での希ガスや小分子の拡散経路を推定するためである。プログラムは、Mac上のSwift 2.2で作成した。Xcodeを使わず、コマンドラインでコンパイルしている。出来たバイナリーを他Mac(Xcode非インストール)にコピーして実行するとライブラリーのエラーが出る。この解決法がいまだ分からず、公開は未定。

実行例1 (石英多形)

  • 下図は石英の多形間でどう隙間が変化するかを見たもので、色のついたところが隙間、四角は単位格子を示している。表示にはVestaを使用。これらは全て、与えた距離(半径)は1.8 Aの場合で、クリストバライト(石英より低密度相)、石英、コーサイト(石英の高圧相), スティショバイト(コーサイトよりも高圧相)を計算した。隙間率は、クリストバライト(17.0%)、石英(5.8%)、コーサイト(1.7%)、スティショバイト(0%)。当たり前だが、高密度になるに従って、隙間が少なくなることがわかる。クリストバライトでは3次元的に隙間が太く繋がっているが、石英、コーサイトではつながりが微妙。スティショバイトに至っては0%なので、図に示していない。
    silica-polymorphs.png

実行例2(LiFePO4)

  • こちらはLiFePO4で、オリビン構造を持つ。八面体席が2つあり(M1, M2)、M1席はLiが占める。この計算では中央部分のM1席の2個のLiを取り去った構造(上側)を使って計算した。距離(半径)は1.8 Aである。下側が計算結果で、z=0.5の断面が見えている。中央で隙間がb軸方向に繋がっていることが分かる。これはLiの拡散経路の可能性を示しているものと考えられる。bond valence mapを使ったオリビン構造についての同様な計算が、古くからあり(I.D. Brownの本やreview参照)、基本的には同じ感じになる。隙間は、M1席の空席とM2席の上下にある八面体空席を使ってジグザグとなりながら繋がっている。M1席に空席があることが重要。bond valence mapとは本来違うものを見ているのだが、同じような絵が得られる。結晶構造によっては価数の違うイオンのdisorderなどがある場合にbond valence計算は工夫が必要だが、これはその点で問題はない。
    LiFePO4.png

実行例3(melanophlogite)

  • melanophlogiteはSiO2組成を持ち、構造内部にメタンなどを含むクラスレート結晶の一種で、天然ではレアな鉱物である。下図は距離(半径)を3.0 Aで計算したもの。大きな隙間がbcc位置とそれ以外の2種あることがわかる。原点と体心位置にある方は小さくて球状だが、もう1つはより大きいが1方向に潰れている。メタンは球状の方に入っているらしいが、それはメタンの形状からも理解できる。隙間率は3.7%。この大きい半径では隙間はつながっていない。半径を小さくしていって見ても、隙間はなかなかつながらない。この構造はSi4面体の5員環が繋がった構造になっているので、隙間間の移動にはこの5員環を抜ける必要がある。メタンなどは生成時に取り込まれた訳だが、簡単には出てこれない構造となっている。イタリア産のmelanophlogiteを少し前に買ったが、ラマン分光で調べたところ、メタンはほぼなくてCO2が入っていた。CO2は多分扁平な方の隙間に入っているのであろう。暇があればDFTでエネルギーの比較をしてみるが。
    melanophlogite.png

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Last-modified: 2016-04-03 (日) 09:11:04 (601d)