解説2021-1

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解説JMPS2021-1

  • Kanzaki, M. (2021) Raman spectroscopic study of pressure-induced phase transitions in tridymite modifications, J. Mineral. Petrol. Sci., 116, 245-250. Online の日本語解説

  • トリディマイトは高温で安定なSiO2相の1つであるが、数多くの多形を持つ(多形のほとんどは準安定相)。常温常圧では、MC, PO-n, MX-1の多形が観察される。隕石など地球外物質ではMCが普遍的に観察されるが、最近はPO-nと思われるトリディマイトが隕石中から報告されるようになった。地球の火山岩などではPO-nが普通に見られ、MCは稀にしか産出しない。MX-1はMCを粉砕することなどで生じる多形で、天然での報告はない。PO-nとMCがどういう環境の違いで生じるかはよく分かっていない。本研究では圧力によってMCからPO-nが生じる可能性を調べた。これまでの研究で圧力によりMCからPO-10への転移が起こることが知られているが、その転移は可逆(圧力を下げるとMCへ戻る)とされていた。この研究では過去の研究を追試すること、MC以外のMX-1, PO-10も調べること、圧力範囲を広げることを行なった。

方法

  • 試料はMCについては異なった条件で合成した2種の試料を使った。MX-1はMCを粉砕したものを使い、PO-10は天然のものを使った。それらをダイヤモンドアンビルセル(DAC)にルビー片とともに導入して、アルコール混合物を圧力媒体として使った。圧力測定にはルビー蛍光法を使った。顕微ラマン分光法でDAC内試料のその場圧力測定を室温で行なった。

結果と議論

  • MCを加圧した場合には、0.4 GPaでPO-10への転移が認められた。さらに加圧すると1.6 GPaで別の転移が観察され、未知のラマンスペクトルを得た。以下これをトリディマイトIIと呼ぶ。この新しい相は8.7 GPa(最高圧力)まで観察された。減圧過程で0.4 GPa付近でPO-10へ戻ったが、常圧に戻してもMCへは戻らなかった。3例実験を行なったが全て同じ結果が得られた。これは過去の研究とは異なっているが、その理由ははっきりしない。MX-1はMCと同様にPO-10に転移して、減圧してもPO-10のままであった。PO-10を加圧した場合にはやはりトリディマイトIIが生じたが、転移は幅を持つようであった。減圧するとPO-10へ戻った。420 cm-1付近のSi-O-Si変角振動ピークが圧力とともに急速に高波数側へシフトした。これは石英やクリストバライトでも既に観察されており、トリディマイトにおいても同様に圧縮の主なメカニズムがSi-O-Si角の減少によるためと考えられる。トリディマイトIIの構造は解明できていない。PO-nの1つ、例えばPO-5の可能性もあるが、PO-5自体の構造もラマンスペクトルも不明なので、現時点では分からない。
  • 今回の研究から、PO-10が圧力によってMCから生じ得ることが分かった。これは隕石中に見つかり始めたPO-10の成因に応用できるかもしれない。つまり、元々隕石中でMCであったものが、衝突による衝撃圧縮によってPO-10へ転移し、それがそのまま回収されたと考えられる。しかし、今回の実験は室温での静的な圧縮であり、時間スケールの短い衝撃圧縮条件とは異なる。更なる研究が必要である。

Last-modified: 2021-12-24 (金) 17:19:11