yukiwikiに置いてあったものはいたずらによって消されてました.googleのキャッシュから復活させました.ついでに少しupdateしました(2007/12/03).

BNコンポジットEC(電気化学工業製)

  • マルチアンビル高圧実験用ヒーター材料として2001年後半頃に「発見」した.これはもともと金属溶解用のヒーターやルツボとして使われていて,ニラコのカタログにもその用途のものが載っている.実際ニラコのカタログで初めてこの材料のことを知った.hBNとTiB2のコンポジットであり,TiB2が電気を通す.グラファイトくらいの抵抗値を持つ.作っているデンカのBNコンポジットECのサイトはここ.常圧でも還元的な雰囲気ならば2000C近くまで加熱できるとある.
  • hBNがcBNに転移してもヒーターとしては使えるだろうと予想されたので,グラファイト(これは高圧下でダイヤモンドに転移し加熱できなくなる)の代替品になるのではないかと思った.重い元素は含んでないためLaCrO3ヒーターやメタルヒーターと違って放射光X線で回折線を観察する際にも都合がよいとも予想した.また他のグループの高圧実験でよく使われているダイヤ+TiCなどのコンポジットヒーターと比べて,成形体が手に入り,かつ加工が可能な点が有利と考えた.
  • 他のヒーターよりも稀少金属元素を使っていないことも長所であろう.
  • デンカからディスク状サンプルをもらって加工してみたところ何とか使えそうなので,50x50x5mm板を10枚注文した(2002年春).注文は島田商会からおこなう.1枚当たり6千円くらいだった.作ってもらったのはちょっと硬すぎたようである.加工は超硬ツールでできるが消耗が激しいので,ダイヤのツールを使った方がよい.丈夫でグラファイトヒーター並みに薄くしても割れなかった.シートヒーターとして使う場合はダイヤモンドカッターで切ればいい.さらにサンドペーバーで厚さを0.2mmくらいに調整していても全然割れなかった.SPring-8で最初18Mセルで円筒とシートヒーターとして何度か使ったが,特に問題はなさそうである.雰囲気は当然還元的になるだろう.またボロンと白金は反応しそうなので直接触れないようにした方がよいであろう.当然試料はシールするか、アッセンブリー自体を焼く必要がある.
  • なお放射光での利用を想定してhBN, cBN, wBN, TiB2の粉末回折パターンを計算して,ここに置いてある.TiB2が高圧で相転移するかどうかは多分よくわかっていないと思う.
  • 島田商会に注文して,新しく10枚買いました(2005年12月).前回よりも柔らかめにしてとデンカにメールでお願いしたのだけど,返事がなかったので柔らかくしてくれたかどうかわからない.表面の見た感じは最初のものとかなり違う.実体顕微鏡で見ると結晶粒が少し荒い感じ.加工した感じはあまり変わらず.
  • SPring-8で2006年3月に14M用円柱ヒーターとしては初めて使った.圧力11-13GPa, 1300Cくらいまで使ったが全く問題なし.少しづつ抵抗が時間とともに変化するようなので電圧制御では温度一定にするなら常に電圧を少しづつ変えないといけないが,電力制御にすると極めて安定していた.回収したヒーターのBNをmicroRamanでチェックしたが(かなり蛍光が強いがBNのピークはわかる),どの部分をとってもhBNのピークしかなかった.
  • 何人かの方に1枚差しあげました.加工性は別にして,特に問題なく加熱できていると報告を受けてます.
  • 最近はダイヤのツールで加工するように変更して,かなり楽になりました(下にもっと詳しく書いてます).
  • SPring-8地球科学研究会でこのヒーターについて発表(2007年1月)アブストラクト
    • この研究会の発表で突然温度が上昇することがあると言いましたが、その後あの現象は起きてません.謎です.

ダイヤ工具

  • BNコンポジットの加工は結構大変なのでミニ旋盤でも使えそうなダイヤチップ等を調べてみました.住友電工のホームページにはサイズが書いてあるので,大体は見当がつくが買ってみないとわからないものも多い.全て住友電工製品.価格はmonotaro.comの金曜特価.
  • 焼結ダイヤチップ TPGE731(材質DA150) 8978円(正三角形チップで穴なし.但し1角のみしかダイヤが付いていない).なおTPGE731は同じ名称でも材質が異なるものが複数ある.DA150であること確認する.TPGE730はほとんど同じで先端半径がもう少し小さい(0.2).TPGE731は手持ちのミニ旋盤用のバイトホルダー(押さえつけるタイプ)に入った.BNコンポジットを削ってみましたが,超硬とは全然違って消耗しないでよく削れます.
  • ついでに比較のためにPVDコートされたチップ TCGT090201N-SC(材質ACS310) 8698円(10個入り).ただし届いて実際切削するとBNコンポジットには歯がたたない.このチップが使えるミニバイトホルダー STGCR0808-09 6285円 (正三角形チップ用,皿ネジM2.2) .8mmx8mm, チップの高さが10mmくらいになる.

Q&A

最近たまにBNコンポジットECヒーターへの問い合わせがあるので,以下まとめておきます.

  • Q) BNコンポジットヒーターとはどういうものですか?
    • A) hBNとTiB2の焼結体です.hBNはもちろん絶縁体ですが,TiB2が電気を流すためヒーターとして使えます.デンカが製造してます.より詳しいことはデンカのweb pageか,ニラコのカラログのp.131をご覧ください.
  • Q) 既存のヒーターと比べての利点/欠点は?
    • A) よく使われるグラファイトヒーターはダイヤモンド化するため高圧側(>10GPa)で使えませんが,このヒーターはそのような高圧下でも使えるはずです.LaCrO3, メタルヒーターと比べるとX線の透過率はよいので,ヒーターを透過させて回折線を取る事ができます.ヒーターに横穴をあける必要はありません. LaCrO3やグラファイトでは一度冷却すると再加熱が困難なことがよくありますが,再加熱は問題なくできました.従来のダイヤモンド+カーバイド系のコンポジットヒーターは自分でシートを作る必要がありますが,これは均質な製品としてコマーシャルに手に入ります.またダイヤモンドを含むコンポジットとは違い,自分で機械加工できます.欠点としてはちょっと硬めなので加工がすこし大変かもしれませんが,ダイヤモンドのツールを使うと簡単に加工できます.B が多いので中性子回折では透過性が悪いはずです.また還元的な雰囲気で使う必要があります.Bは白金と反応することが知られているので,ヒーターと白金(試料チューブや熱電対)を直接接触させることは避けた方が無難です.乾燥のため常圧でヒーターごとセルを高温炉で処理する時は還元的雰囲気にしないとB が酸化します.
  • Q) 最高使用温度/圧力は?
    • A) 私は最高14GPa, 1500Cくらいまでしか使ってませんが,電気を流す方はTiB2なのでhBNがcBNに転移しても加熱に問題はないはずなので,もっと高い圧力でも使えると思ってます.1気圧で還元的な雰囲気では2000C近くまで加熱できるので,高圧下でもその程度までは加熱できると予想されます.他の方からもっと高圧で使って問題なかったと聞いてますが,詳しいPT条件はよく知りません.
  • Q) X線は透過しますか?
    • A) 比較的重い元素としてTiが入ってますが,BN, Bで薄まっているのでSPring-8でのX線回折実験やラジオグラフィ等で使ってこれまで問題は起きてません.Bは中性子を吸収するので中性子回折ではうまくないはずです。
  • Q) どこで手に入りますか.
    • A) 製造はデンカですが,販売は島田商会を通して購入する必要があります.島田商会の東京支社の機能材料部に連絡してください.googleすれば連絡先がわかります.私はこれまで50x50x5mmの板10枚を2度作ってもらってます.技術的なことは島田商会ではわからないので,デンカの担当者に聞くしかないのですが,昔連絡した時のメールが見つからないので担当者のメールアドレスが今ちょっとわかりません.
  • Q) 加工はできますか?
    • A) ちょっと硬いのが難点です.シートヒーターとして使うならダイヤモンドカッターで切って紙ヤスリで厚さを調整すれば大丈夫です.筒状ヒーターとして使う場合は加工は結構大変です.私は最初超硬ドリル,バイトをひんぱんにグラインダーで磨きながら加工してましたが,最近は焼結ダイヤモンドチップ付きのスローアウェイバイトに変えてます(住友電工のスミダイヤを使ったもの).これに変えてから消耗を気にせずに速く加工できるようになりました.穴開け用のドリルについては,ハイスドリルにダイヤ粉末を電着したもの(プロクソン)を試してみてます.一応問題なく加工できてますが,径の種類があまりありません.材料自体は緻密で丈夫なのでグラファイト並みに薄くもできます.最近イコマダイヤで色々な径のドリルが手に入ることを見つけました。
  • Q) 使用時のこつは?
    • A) このヒーターは温度を一定にしている間に抵抗が少しづつ低下する傾向があるので,電圧制御している場合に温度を一定するために少しづつ電圧を上げる必要があって面倒ですが,電力制御または温度制御すればその必要はなく安定してます.私はSPring-8(BL04B1)では電力制御で使ってます.グラファイトより少し抵抗が高めなので,断面積を大きめに加工するとグラファイトと同じような電源モードで加熱できるはずです(私の場合はBL04B1のSPEED15001号機でグラファイトモード、x2、PCで高電圧低電流モードで加熱してます).薄くしすぎると電圧が飽和して加熱モードを切り替えて加熱しないといけない場合がありますが,一度温度降ろしても再加熱に問題ないため,一度加熱電源落としてトランス等を切り替えて再加熱すれば大丈夫です
  • Q) サンプルもらえますか?
    • A) 余裕があればブロック1枚差し上げます.後は自分で評価して,よければ直接島田商会から購入してください.
  • Q) 引用は?
    • A) 上の研究会の要旨くらいしか書いてません.そのうち何かにまとめておきたいと書きたいと思ってますが...以下の論文でこのヒーターを使った事実が簡潔に述べてあります。M. Kanzaki, "Crystal strucuture of a new high-pressure polymorph of topaz-OH", American Mineralogist, 95, 1349-1352, 2010.

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Last-modified: 2007-12-03 (月) 23:29:27 (3641d)