固体NMRの原理と地球科学への応用(入門編)

By Xianyu Xue

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NMRで分かること

NMR(核磁気共鳴法)は分光法の一種で、物質の局所構造(原子の配置及び距離関係)とダイナミックスの解明に役立つ。また、イメージングや拡散測定にも広く応用されている。ここでは、主に構造解析への応用を取り上げる。

NMR分光法は原子核のスピンをプローブに、特定の原子の周りの構造(結合する原子の種類、数(配位数)、距離など)の情報を提供する。原子周期律表のほとんどの元素が原理的にNMR測定が可能であるため、物質の構造に関する多方面な情報が得られる。最近はXRDに代わって、NMRによる結晶構造の精密化決定までできるようになりつつある。地球物質においては、よくNMR測定の対象となる核種は 29Si、27Al、1H、17O、23Na、 31P、13C、25Mgなどが挙げられる。

NMR分光法による構造解析の長所は:
  1. 定量的。NMRピーク強度が組成に関わらず、試料に含まれる対象核種(元素)の量に比例する。
  2. 周期的構造の有無にかかわらず、局所構造情報を与える。そのため、ガラスなどの非晶質物質の構造解析には特に重宝される。また、XRDが苦手である鉱物中のSi-Al-Mg分布の秩序度や水素の局所構造と水素結合強度の解析が得意とする。
  3. 非破壊的。NMR測定は普通固体の場合は粉末または塊のままで測定し、測定後試料は完全に回収できる。もちろん液体の測定も可能である(むしろ固体よりも測定が容易である)。
NMR分光法の限界といえば:
  1. 感度が低いため、微量元素の局所構造の解析には向かない。
  2. 原子核のスピン(弱い磁化)を利用するため、不対電子を持つ遷移金属や希土類元素が(数%以上)試料に含まれると測定に支障を来す。
  3. バルク測定法であるため、共存相(構造)の空間的分布を知るには、ラマンなどの顕微測定法と組み合わせる必要がある。
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多核種・多次元固体NMR分光法の基本原理と魅力

地球構成物質の原子レベルの構造解明はそれらの巨視的性質を理解・モデリングするために必要不可欠である。核磁気共鳴(NMR)分光法は個々の元素の周りの局所構造情報を与えるのみでなく,多様な多核種・多次元測定法を生かすことにより,原子間のつながりの情報も直接提供できる。下記の筆者のレビー論文ではNMRの基本原理を解説した後、最近の研究成果を応用例として挙げながら,多核種・多次元固体NMR分光法の魅力を紹介する。

薛 献宇、神崎 正美(2008)多核種・多次元固体NMR分光法の魅力 ー含水高圧鉱物・含水アルミノケイ酸塩ガラスを例にー 地球化学 (accepted)
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